34巻ネタバレ注意!!!
大丈夫な方のみドゾ。























この世に一つの。











「あらあら。もう来ちゃったの?」

帰国の前に挨拶を…と立ち寄った岩瀬家では、母あかりがクルクルと働いていて、石川と岩瀬を出迎えてくれた。

「今晩のフライトで日本へ戻ります」
「そう…なんだか勿体ないわね。折角悠さんと仲良くなれたのに…残念だわ」

あかりのとても残念そうな声に岩瀬は苦笑を漏らし―

「まだ時間あるよ。母さん」
「そうね…まぁ、とりあえず座って」

パタパタとキッチンへと向かうあかりに、石川は慌てて…

「あの!俺も…」

石川の声に振り向いたあかりは暫し考え…ニッコリと頷いた。


   + + +


「悠さん、そこのお皿取ってくれる?」
「はい…」

あかりはティカップを出しながら、クスクス笑う。
そんな上機嫌な様子のあかりを見て石川は不思議がる。

「あの……?」
「うふふ…なんだか、嬉しくって」
「嬉しい?」
「えぇ。もう一人子供が…こんな素敵な息子が増えて、嬉しいの。」
「………」

あかりの言葉に何も言えない石川は、照れくさくて思わず俯いてしまう。
そんな石川を見て、あかりは更に嬉しそうに…

「ねぇ、悠さん。私の事は『あかりさん』って名前で呼んでね」
「え?」
「あ。でも『おかあさん』って呼んでもらうのも捨てがたいんだけどなぁ……」

真剣に悩むあかりは暫く考え…そして、うん。と一つ頷き…そして、石川の手を取りニコリと微笑んだ。

「でも、明さんの事『アッキーさん』って呼んでるでしょ?だから私も名前で呼んでもらえると嬉しいわ」
「はい、じゃあ、あの…あかりさん」
「はい。よく出来ました」

あかりは小さい子にするように石川の頭を優しくなでた。
そんな、あかりの仕草に母を思い出し…照れながらも石川は嬉しくなった――


   + + +


お茶の準備が終わる頃、あかりは石川に『ちょっと待ってて』と言って、キッチンを出た。
そして、戻ってきたあかりの手には大輪のバラが一輪。
真っ白なソレは真っ白のリボンが付いていて、まるでブーケのようだった。


「おめでとう」

あかりは満面の笑みと祝福の言葉、そして大輪のバラを石川へと差し出す。
思わす受け取った石川は、戸惑いを隠せなくて…

「あの…あかりさん?」
「昨日は急だったから渡せなかったけど…私からの気持ち。」
「あかりさん…」
「やっぱり!悠さんには白が似合うわね」
「………」
「ソレはね、ブーケなんだけど【ヴィクトリアン・ローズ】って言って、何本ものバラの花びらを繋ぎ合わせたものなの。この世に一つしかない花よ」
「あかりさん…」
「貴方の為の花だから…貰ってくれる?」
「勿論です!…ありがとうございます」

あかりから貰った花をジッと見つめ、石川は感動する。
岩瀬の家族に認めてもらったことが、今はなによりも嬉しい。

何も言えず、立ち尽くしている石川にそっと手を触れ、あかりは―

「これからも宜しくね。悠さん」
「こちらこそよろしくお願いします」




そうして、深々と頭を下げあう二人は同時に顔を上げクスクスと笑いあい。
穏やかな笑い声は、暖かなキッチンへと広がっていった――











2008.10.20 UP













悠さん!岩瀬!本当におめでとーーーーvvvvv